第1回 M&Aアドバイザーの不確かな実力 ①

2023-09-19

後継者不足の社会課題などにより近年M&Aの件数は増加し、それに伴いM&A仲介業界はかつて無いほどの盛り上がりをみせています。業界の中に入って色々な方と意見交換をする中、盛り上がっている当業界こその危うい状況も見えてきたので、トピックに分けて掲載していきます。

M&A仲介業界が少しでも良くなり、譲渡企業、譲受企業にとって良いM&Aが実施されることに役立てば嬉しく思います。

第1回目の今回は『M&Aアドバイザーの実力の不確かさ』というテーマです。

目次

現在のM&Aアドバイザーに感じる危うさ

M&Aアドバイザーが急増していることで、M&Aアドバイザーの実力を疑う声も目立ってきています。

大手を筆頭にM&A仲介会社の各社は、多くの譲渡案件を受託するためにM&Aアドバイザーを急激に増やそうとしています。そして、若いうちからの高年収への期待などからM&A業界に入ることを希望する人も急増しています。このように需要と供給がマッチしていることで、ここ数年でM&Aアドバイザーの数は数倍になっているのではないでしょうか。

一方で、業界に入ってくるほとんどの人はM&Aが未経験であり、中には決算書すら見たことがない人も数多くいます。ここ数年でM&A仲介業界へ入ってきた人の特徴は下記が多いです。

  • M&A未経験
  • 法人営業が得意
  • 担当する業界で働いていた(薬局やMRで働いていた人が、入社後ヘルスケア業界を担当するなど)
  • ITなどの事業会社で新たにM&A事業の立ち上げメンバーに選ばれた

M&Aのプロセスを進めることはM&Aアドバイザーの仕事の一部に過ぎず、数回行えば誰にでもできるようになります。しかし、実際にアドバイザーとして重要になる素養は、状況に応じて様々な代替策や改善策を考え、お客様に的確なアドバイスをする力だと思います。

その力を一朝一夕で身につけることは難しく、ある程度の経験が必要になってきます。

投資銀行などのプロフェッショナルファームでは若手のうちはお客さんの前面に立つことは基本的にありません。数年間、分析作業や資料作成などを行いながら先輩に同行させてもらうなどの修行期間を経て、少しずつお客さんにとって意味のあるアドバイスができるようになります。

お客さんとする企業の規模の大小の差はあれ、それを飛ばして、経験に基づいた思考力・考える深さが不足しているアドバイザーが、ビジネスにおいて百戦錬磨のオーナー社長にアドバイスをしているのは不思議な感じがします。

保険などの解約できる商品を売るのではなく、オーナー社長が一生をかけて作ってきた会社を売却するわけなので、アドバイザーの役割は非常に重要です。

このようなことを気にもせず、実力が不確かなアドバイザーが、動き回ることで案件を受託し、M&Aプロセスを進めていく状況には業界としてかなりの危うさを感じずにはいられません。

(続く)

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