上場M&A仲介会社の一覧
改めて、M&A仲介サービスを主事業とする上場している仲介会社は以下の6社があります。
- 日本M&Aセンター
- M&Aキャピタルパートナーズ
- ストライク
- M&A総合研究所
- 名南M&A
- オンデック
この中で、日本M&Aセンター〜M&A総合研究所は東京を本社としており、名南M&Aは名古屋、オンデックは大阪を本社としています。そのため、本記事では、東京を中心に競合している日本M&Aセンター〜M&A総合研究所の4社と、東京以外を事業の中心としている名南M&A、オンデックの2社を別々に比較します。
次章以降で、決算の比較を通して特徴の説明や各社の今後の戦略を記載していきます。
M&A仲介大手3社
まずはM&A仲介・M&Aコンサル会社の中でも特に知名度が高く、東京に本社を置くM&A仲介大手4企業について比較します。
M&A仲介大手3社と急成長中の1社
M&A仲介大手3社と言われるときは下記の3社を指すことが一般的です。
- 日本M&Aセンター
- M&Aキャピタルパートナーズ
- ストライク
日本M&Aセンターの設立は1991年、M&Aキャピタルパートナーズの設立は2005年、ストライクの設立は1997年といずれも長い歴史を持つ会社です。
案件獲得の方法の傾向としては、日本M&Aセンターとストライクは提携する金融機関などからの紹介案件の割合が多い一方で、M&Aキャピタルパートナーズは買い手企業からの需要を元に営業を行うスタイルと言われています。
各社の特色やカルチャーに違いはありますが、提供するサービスは基本的には同じものになります。
最近ではこの仲介大手3社に加えて、テクノロジーの力を活用し急成長中の2018年に創業、2021年に上場したM&A総合研究所も合わせて比較されることが増えているので本記事においてもM&A総合研究所を加えて大手M&A仲介4社として公開情報を横比較します。
大手M&A仲介4社の仲介手数料比較
まずはM&A仲介大手4社の売り手側の手数料体系を比較します。
開示情報に基づくと下記のようになっています。
(引用:各社ウェブサイト)
手数料体系は各社のM&Aプロセス全体において手数料に対する考え方の違いが反映されています。
後発のM&A総合研究所は成功報酬のみにすることによって、M&Aの売却プロセスを開始する精神的な敷居を下げています。
M&A総合研究所自身も上場会社で唯一完全成功報酬制を採っていることを強みとしています(買い手企業に対しては中間金を取ります。また、譲渡価格でもないようです)。
ストライクは2021年に着手金+成功報酬だった手数料体系を中間金+成功報酬に変更することによって売り手からの相談間口を拡大しています。
一方、日本M&Aセンターは着手金を設定することはM&Aを円滑に進めていく上で重要と考えており、着手金+成功報酬の手数料体系としています。
手数料体系についてはそれぞれ一長一短があります。詳細については下記の記事をご覧ください。
最低成功報酬は、ストライクのみ公表していますが他の3社も同等金額水準と考えられます。
成功報酬の計算は、日本M&Aセンターのみ時価総資産となっており、負債が多いほど手数料は高くなるので注意しましょう。
日本M&Aセンターは、同じ企業規模にも関わらず、負債が多い方が(純資産で考えるため)手数料が安くなる譲渡価格ベースは不公平になると考え、時価総資産ベースを採用しているようです。
大手M&A仲介4社の業績比較
続いて、各社の直近決算期の決算状況は以下のようになっています。
(参照:各社決算説明資料。一部公開情報を元に当社で算出。)
直近期の年度末決算では、各社業績もよくM&A市場全体の需要の高さがよくわかる結果となっています。
売上規模ではM&Aセンターが図抜けて大きくなっており、2位のM&Aキャピタルパートナーズの約2倍となっています。
一方で、大型案件については「手数料が1億円以上の成約案件数」や「アドバイザー1人当たりの売上高」を見ても分かる通りM&Aキャピタルパートナーズに優位性があるようです。
M&A総合研究所は他3社と比較するとまだ規模は小さいですが、創業してからまだ期間が短く、成長性も高いので大手3社を脅かす存在になると考えられます。
市場が伸びている間は各社順調に成長する一方、その伸びが鈍化してきた際に戦略の差が現れてきますので注目が集まります。
また、大手仲介会社からの独立も増えており、優秀なM&Aアドバイザーが大手から抜け、且つ、ライバルが増えていくことで大手仲介会社の業績に与える影響も今後は注意する必要があります。
大手M&A仲介4社の業績予想比較
各社の今期の決算期の決算予想は以下のようになっています。
(参照:各社決算短信)
各社成長の鈍化を予想しています。
特に直近の四半期決算では前年同四半期対比で大手3社はマイナス成長という結果になっています。
この成長の鈍化が一時的なものなのか、M&A仲介業界の構造変化によるものなのかは今後の各社の業績変化を見ながら判断する必要があります。
日本M&Aセンターの2023年3月期の決算発表も迫っているので注目したいと思います。
東京以外を本社とする上場M&A仲介会社2社
M&A仲介大手3社とM&A総合研究所以外でM&A仲介会社として上場している会社として、名南M&Aとオンデックがあります(他の事業が主事業である上場会社は除く)。
名南M&Aは名古屋に本社を持つ仲介会社で、オンデックは大阪に本社を持つ仲介会社です。
手数料体系としては、下記のようになっています。
- 名南M&A:着手金+成功報酬
- オンデック:着手金+中間金+成功報酬
両社の直近の決算期の業績は以下のようになっています。
(参照:決算説明資料。一部公開情報を元に当社で算出。)
売上高は近い数字となっていますが、利益率は名南M&Aが高くなっています。
一方、「1件当たりの売上高」はオンデックが3倍近く大きくなっており、比較的小規模でも案件数を行う名南M&Aと規模が大きめを狙うオンデックという傾向があります。
両社ともこれまで主に首都圏以外の地域で案件を獲得する戦略を採っています。
名南M&Aは引き続き東海地域を中心に大阪や静岡の強化を図る一方、オンデックは今後は東京の陣容も強化していくことを目指しています。
まとめ
本記事では上場しているM&A仲介大手の決算や重要指標の比較分析を行いました。
各社の戦略によっても数字に違いが出ているのは面白いと思います。
今後も決算が出た際には本記事を更新してその時の状況を分析していきますので読んでいただけると嬉しいです。
事業承継・M&Aにお困りの際は一度お気軽にお問い合わせください。
あなたのM&A、事業承継が成功することを願っています。