【知らないと危険?】M&Aで支払う仲介手数料は?各手数料の相場や計算方法を解説

2023-01-30

M&Aをおこなう際には、M&A仲介会社やFA、M&Aプラットフォームなどが提供するサービスを利用することになるので、利用にあたって様々な手数料を支払う必要があります。

一般的によく知られているのは成功報酬(M&Aが成約した際に支払う手数料)ですが、仮にM&Aが成功しなくても手数料がかかってくる場合があります。

今回はM&A仲介会社にお願いした場合、どのような手数料を支払う必要があるのかを説明していきます。

M&A仲介会社によって支払うべき手数料の種類や金額は異なるので、

「想定以上に手数料がかかってしまい、売却した際の手取り金額が少なかった」

「M&Aを途中で取り止めたのに高額の手数料だけ取られてしまった」

ということがないように、各々の手数料の意味や相場を事前に把握した上で、M&A仲介会社に手数料を確認し、M&Aを進めていきましょう

目次

手数料の種類‍

M&Aをおこなう際、一般的にM&A仲介会社に支払う可能性のある手数料の種類は以下になります。

  • 事前相談料
  • 着手金
  • 中間金
  • 成功報酬
  • 月額報酬(リテイナーフィー)  

M&A仲介会社によって異なりますが、上記のうち中間金と成功報酬の支払いを求めるケース、成功報酬のみを徴収する「完全成功報酬型」のケース、が多くなっています。

「成功した場合だけ手数料をもらう」ということで説明しやすく売り手の理解も得やすく、かつ、好まれやすいので、最近では完全成功報酬型を採用する仲介会社が増えています。

しかし、一見、完全成功報酬型は譲渡企業にとって好ましい仕組みに見えますが、仲介会社が成功報酬を求めるばかりに(成約しないと自社に手数料が入らないので)、好ましくない買い手企業や契約条件であったとしても、無理やり案件を成約させようとする力が働く可能性もあり、必ずしも完全成功報酬型だけが良いということではありません

次章以降でそれぞれの手数料の考え方を詳細に説明していきます。

M&A仲介会社に支払う手数料の種類と相場

本章では、それぞれの手数料の考え方や相場を説明していきます。

事前相談料

事前相談料とは、正式にM&Aの依頼を行う前にM&A仲介会社へ簡単な相談や質問をする際にかかる手数料です。

M&A仲介会社は初回問い合わせの敷居を下げ、多くの相談を受けようとするため、ほとんどの場合事前相談料を無料に設定しています。

事前相談料を有料にしているケースは珍しいと言えるでしょう。

仮に設定している場合は、1万円程度が相場となります。

初めてM&A仲介会社に相談する際は、念のためウェブサイトなどで事前相談料の有無を確認してから問い合わせするようにしましょう。

着手金

着手金とは、M&A仲介会社に正式に依頼した後に支払う手数料です。

着手金を設定することにどのような意味があるのでしょうか?

着手金を支払っているということは、それだけ真剣にM&Aを検討しているということのメッセージになります。結果的に、買い手企業やM&A仲介会社に信頼感や安心感を与えることができ、各々に真剣なM&A案件として対応してもらいやすくなります。

なぜ信頼感や安心感を与えることができるかというと、中には、M&Aをそこまで真剣に検討はしていないものの、市場価値を確認することを目的に仲介会社に依頼をする売り手や、売り手の内部情報を得ることを目的に買う気を装う買い手なども中には存在します。

このような売り手や買い手は手数料がかからないと参加してくる可能性が高まりますので、着手金のメリットとしては、このような検討レベルの低い参加者を未然に防ぐことができることがあります。

このような観点から着手金を設定しているM&A仲介会社は少数ですが存在します。

設定する場合は、50〜200万円で設定するのが相場となっています。着手金はM&Aが成約したか否かに関わらず返金はされません

一方、着手金が設定されている場合、売り手企業が依頼する際のハードルが高くなることに加え、M&Aが失敗しても返金されないことや、売り手は売却資金が入る前に支払う必要があるので、手元資金が十分でない場合は事業に影響を与える可能性があるなどのデメリットがあります。

一般的には、着手金がないことが好まれる傾向にあります。

中間金

中間金とは、その名の通りM&Aのプロセスがある程度進行した時に支払う費用です。

一般的には基本合意書の締結後のタイミングで支払われます

他にも意向表明書が提示された後、トップ面談後などのタイミングもありますので、中間金の支払いを設定している仲介会社の場合は支払いのタイミングも確認しましょう。

中間金は仲介会社がM&Aの交渉を一定程度まで進めたことに対する報酬を意味するので、中間金が設定されている場合、M&Aが成約したか否かに関わらず返金はされません

中間金は、「無料」の場合、「固定額」の場合、「成功報酬に対する割合」の場合の3つのパターンがあります。

また、3つ目の「成功報酬に対する割合」の場合、案件規模が大きくなり、成功報酬も高くなれば、中間金も多額になり売り手にとって大きな負担になる可能性があります。

M&Aが成約しているわけではないため、譲渡代金(売却代金)は入っておらず手元の現金から支払う必要があります

中間金が払えないということがないように、中間金の有無、金額も事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

尚、仲介会社によっては中間金は支払うものの、成功報酬から差し引かれる場合があります。つまり、成功報酬の一部を前払いするようなケースです。この場合は、成約すれば結果的に中間金がないのと同じ金額になります。

中間金の相場としては、固定額の場合100~200万円程度、成功報酬の割合の場合は10〜20%が一般的です。

中間金は、着手金同様に売り手からすると成約しなくても無駄な手数料を払う必要があるというリスクが存在します。

仲介会社にとっては、成約しなかった場合に無報酬であることを避けるために中間金を設定するケースも多くみられます

中間金を設定していない場合、前述の通り、仲介会社は無報酬を避けるために売り手に不利な条件でも無理矢理に成約させようとするケースや買い手企業がデューデリジェンスにおいて多少の問題が見つかっても案件を推し進める可能性があるとも言われています。

じっくり時間をかけて進めたいと考える場合は中間金が設定されている仲介会社を選ぶのも一つの選択肢です。

中間金が設定されている場合は条件を事前に確認しておくこと、また、設定されていない場合は報酬が支払われない可能性があっても顧客の立場になって親身にサポートをしてくれる仲介会社を選ぶことが重要になります。

自社の財務状況も確認しながら、中間金のあるM&A仲介会社を選定するのか、無料のM&A仲介会社を選定するのか、考えるのが良いでしょう。

成功報酬

成功報酬は、M&A仲介会社の主な収益源であり、最終契約締結後に支払う手数料です。

M&Aの金額を元に割合で計算されるレーマン方式を採用している仲介会社がほとんどです。レーマン方式の計算方法は次章で詳しく説明しますが、金額毎に掛ける料率が変化する方式です。

基準となるM&Aの金額は仲介会社によって異なり、移動総資産、企業価値、株式譲渡額のいずれかを用います。

株式価額と負債総額の合計である移動総資産ベースの計算は、他の企業価値、株式譲渡額よりも基準額が大きくなるため成功報酬も高額になります。

<成功報酬の手数料>

移動総資産 ベース> 企業価値ベース > 株式譲渡額ベース

  • 株式譲渡額:M&Aの買い手が売り手に支払った対価
  • 企業価値:株式価額+有利子負債
  • 移動総資産:株式価額+負債総額(企業価値に加えて、買掛金など利子のない負債も合算された基準額)

レーマン方式では、株式譲渡額(株式時価総額)を基準に計算されることが一般的です

移動総資産ベース、企業価値ベースで計算する仲介会社は手数料が高額になる可能性があるので注意しましょう。

相場としては、株式譲渡額が5億円以下の部分は5%程度となります。

また、成功報酬については、仲介会社はどんなに案件規模が小さくても最低限の手数料を要求することが基本になっています

最低報酬と呼ばれ、大手の仲介会社だと2,000万円程度、大手仲介会社以外だと数百万円〜1,000万円程度が相場になっています。

リテイナーフィー(月額報酬)

リテイナーフィー(月額報酬)とは、M&A仲介業者に支払う月額の定額顧問料です。

売り手や買い手それぞれに対して行う、分析や調査などM&A戦略全般に関わる様々なM&A仲介の活動費用で、担当者のレベルや案件の難易度によって金額が変わってきます。

リテイナーフィーは、M&Aが途中で中止になっても返金されないことや、リテイナーフィーを支払っても期待したほどの働きをしてくれないケースもあるため、支払う側にとってはネガティブに考えられる傾向にあります

また、M&Aのプロセスが長引くほど支払い総額が多くなるため、十分な資金力必要になります。


最近では、仲介会社の競争激化に伴い、リテイナーフィーを取らない仲介会社がほとんどですが、M&Aも含めた企業のコンサルティングとセットになっている場合などはコンサルティング費用としてリテイナーフィーを支払うケースもあります。

一方で、リテイナーフィーがあることがポジティブに働く場合もあります。

リテイナーフィーを支払うことで、仲介会社はよりしっかりと貢献する必要性が増し、一生懸命働くことによりM&Aが成功しやすいという面があります。

また、リテイナーフィーを設定することで成功報酬を下げている仲介会社も存在するため、M&Aが早期に成約した場合はトータルの費用では少なくなるというケースもあります。

そうは言っても前述の通り、基本的にはリテイナーフィーを取らない仲介会社が多いので、リテイナーフィーが無料の仲介会社を選択すべきです

もし支払う必要のある仲介会社の場合は、支払う価値のある担当者なのか、手数料に見合う働きをしてくれるのかをしっかりと見極める必要があります。

リテイナーフィーの相場は、M&Aコンサルタントのレベルにもよりますが、月に50~300万円程度が一般的となっています。

レーマン方式の計算方法

本章では成功報酬額を決める際に用いられるレーマン方式の計算方法を説明します。

レーマン方式の計算方法と事例

レーマン方式とは、M&A基準額のレンジによって手数料率が変動する計算方法です。

以下で事例をみながら計算方法を理解しましょう。

まずは、一般的なレーマン方式による手数料率は以下のとおりです。

(譲渡価格ベース)

  • 5億円以下の部分:5%
  • 5億円超~10億円以下の部分:4%
  • 10億円超~50億円以下の部分:3%
  • 50億円超~100億円以下の部分:2%
  • 100億円超の部分:1%

注意すべきなのは、基準額に一律かけるのではなく、レンジに含まれる分の金額のみをかけて足し合わせる計算となることです。

計算例を下記でみていきましょう。

① 買収価格(譲渡価格)が1億円の場合

  • 1億円×5%(5億円以下の部分) = 500万円

支払う成功報酬:500万円

② 買収価格が20億円の場合

  • 5億円×5%(5億円以下の部分) = 2,500万円
  • 5億円×4%(5億円超~10億円以下の部分) = 2,000万円
  • 10億円×3%(10億円超~50億円以下の部分)= 3,000万円

支払う成功報酬:7,500万円

以上が計算事例になります。

尚、ここに税金も追加されるので注意が必要です。

成功報酬の計算で確認すべきこと

レーマン方式を使って成功報酬を計算する上で、確認すべきことが2点あります。

  • 計算の基準を確認する
  • 最低報酬を確認する

計算基準を確認する

上記の例では、金額の基準を譲渡価格ベースとしています。

大半の仲介会社が譲渡価格ベース(株式譲渡額)での計算としています。

しかし、中には移動総資産ベースや企業価値ベースを採用している仲介会社もあります。

前章で説明した通り、移動資産ベースや企業価値ベースの場合、譲渡価格ベースよりも基準の金額が大きくなるので、掛ける料率が同じ場合でも成功報酬は高くなります。

例えば、株式譲渡額が20億円で負債が40億円あり、総資産60億円の企業の成功報酬を考えてみましょう。

移動総資産ベースの計算を採用している場合で、料率は前項と同じと仮定した場合の成功報酬をは下のようになります。

<移動総資産ベースの計算>

  • 5億円×5%(5億円以下の部分) = 2,500万円
  • 5億円×4%(5億円超~10億円以下の部分) = 2,000万円
  • 40億円×3%(10億円超~50億円以下の部分)= 1億2,000万円
  • 10億円×2%(50億円超~50億円以下の部分)= 2,000万円

支払う成功報酬:1億8,500万円

前項②の譲渡価格ベースで計算した7,500万円より大幅に増加しています。

負債部分にも成功報酬がかかってくると考えると分かりやすいかもしれません。

このように、何の金額の基準を使っているかによっても成功報酬は大きく異なってくるので、しっかりと確認するようにしましょう。

また、譲渡価格ベースでも素晴らしいサービスを提供している仲介会社がほとんどですので、移動資産ベースや企業価値ベースで計算する仲介会社は避けることをお勧めします。

最低報酬を確認する

大半の仲介会社は最低報酬額を設定しており、どんなに案件規模が小さくても最低限の手数料を要求することが基本となっています。

例えば、大手の仲介会社で最低報酬額を2,000万円と設定している場合、前項の①のレーマン方式の計算で500万円と算出されても、最低報酬額を下回るため仲介会社への支払額は最低報酬額の2,000万円となります。

M&Aが成約しても、譲渡金額(売却金額)が小さく、最低報酬額を下回った場合、買い手企業から入ってくる売却金額よりも仲介会社に支払う金額が大きくなってしまったということにもなりかねません。

仲介会社を選定する際には、最低報酬額を確認し、自社の売却金額も考慮に入れた上で決定しましょう。

デューデリジェンス費用(買い手企業)

デューデリジェンス費用は基本的には仲介会社へ支払う手数料ではないですが、買い手企業が支払う手数料の内、小さくない金額ですので本章で説明します。

デューデリジェンス(DD)は一般的に基本合意契約の締結後に行われます。

費用は買い手側が負担をし、実施の有無の判断、調査のレベル感の判断も買い手が行います。

デューデリジェンス費用は基本的に仲介会社ではなく、弁護士や会計士、税理士などの専門家へ支払われます。

デューデリジェンスとは、M&Aを行うにあたって買い手側が売り手企業、または事業等の実態を事前に把握し、適切な判断をするための調査のことを言います。

買い手側にとっては、買収後に隠れていたリスクが顕在化し、M&A失敗とならないように、最終契約書の締結前に弁護士や会計士、税理士などの専門家に依頼して調査や評価を行います。

費用の相場は、会計・税務デューデリジェンスと法務デューデリジェンスを実施する場合、合計で50~300万円程度となります。

買い手が、小規模M&Aでリスクが低いと判断する場合、デューデリジェンスを実施せずに、顧問税理士を含めてインタビューを行うなどの簡易的な方法で済ませるケースもあります。

M&Aは企業にとって重要な判断で失敗は許されないことから、買収後に問題が顕在化しないように買い手にとって事前にデューデリジェンスをしっかりと行うことが望ましいです。

最近では、一部の仲介会社がM&A表面保証保険を無料で付与しており、買収後に重大な違反が発覚した際に一部損害を補填してくれるようなサービスも存在しますので積極的に活用しましょう。

まとめ

以上のようにM&Aには売り手、買い手ともに様々な費用がかかります。

その費用がかかる背景や相場を理解した上で、依頼しようとしているM&A仲介会社ではどのような手数料が設定されているかをしっかりと確認し、選定するようにしましょう。

また、仲介会社によっては、売り手と買い手では支払う手数料額や手数料形態が異なる場合があるので、間違えないように確認しましょう。

今回はM&Aにかかる費用を説明しましたがM&A仲介会社の良し悪しは手数料額だけでは決まらず、あくまで選定する上での要素の一つでしかありません。

売り手にとっても、買い手にとってもM&Aを成功させることが一番の目的ですので、手数料の確認は必要ですが、総合的に検討して判断することが重要になります。

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M&Aインテリジェンス
会社名:
株式会社M&Aインテリジェンス

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東京都中央区日本橋茅場町

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外資系投資銀行出身者や士業、AI・システム専門家のメンバー等で構成
事業承継・M&Aに関するご相談のある方へ